早いもので、チビ達の「卒業試験」から半年が過ぎた。
チビ達はあれからそれぞれの道を行き、今では立派に暮らしている。
六匹のしぃはそれぞれ保護指定を受け、三毛、フサはしぃ対策委員会に入会し、私の教え
た経験を生かし、アフォしぃを抹殺する傍らベビしぃの保護に勤めている。
シロとクロの二匹は、夫のギコを見つけ今では両方とも一児の母として家族仲良く暮らし
ている。そして・・・。ギンとボロの姉妹は、今もモモラーの元に居た。
モモラーはあれから、「アフォしぃの子供はアフォしぃという定義の矛盾」という声明を
発表し、人々が信じていた定義を真っ向から批判した。
モモラーは今、ベビしぃの寺子屋みたいな物を開き、育児壁が無いアフォしぃ、経済に余
裕の無い貧乏なしぃ、捨て子のしぃなどを保護し、育てながらベビの教育をしている。
ギンとボロはモモラーの助手をしながら、姉妹仲良く暮らしている。
そして、母親の一周忌がやってきた・・・。
「てっきり来ないものかと思いましたよ。」
モモラーが意外か?と思える反応をする。
「当たり前ですよ。アフォしぃとはいえ私達の母親です。お墓参りくらいしないといけま
せんよね。」
「ありがと、フサちゃん。それにシロちゃんやクロちゃん。三毛ちゃんまで・・」
ギンはフサと握手しながら見渡した。懐かしい顔が揃っている。
「ありがとうございます・・みんな。」
ボロは目に涙を溜めて答えた。
「嫌だな、ボロちゃん。私達友達じゃない。」
「そうよ。どんなに離れていても心はいつまでも一緒よ。」
シロとクロは笑いながらボロの肩を叩いて言った。
そして・・。三毛がモモラーにお辞儀をし、喋り始めた。
「モモラー先生。お久しぶりです。今日は母親の一周忌の日だと言うことをギンちゃんか
ら聞いて・・あんな人でも私達を育ててくれた母親です。せめて安らかに眠っている事
を祈っています。」
そう言いながら、三毛は半年前と変わらずに整然と並べられた石、母親の墓石に向かって
線香をたいた後、黙祷を捧げた。
「お母さん・・。」
ボロは墓石のちょうど上の空色の空間に、母親の笑った顔を見たような気がした。
一瞬泣きそうになったが、ぐっと堪えた。
「(強くならなきゃ・・。お母さん、見てて。私、お姉ちゃんと一緒に精一杯生きてみる)」
六匹のしぃ達をしばし見つめた後、モモラーは口を開いた。
「みなさん。せっかく来たんですから今勉強中のベビ達も見ていきますか?」
「あ、そうそう!今度は8匹もいるんだよ!見においでよ!」
「うん!いくいく!」
そういうと、六匹のしぃ達は小屋へ駆け出した。
一人残ったモモラーは、アフォしぃで有った母親の墓石に向かって手を合わせ、祈った。
「貴方達のベビは、こんな立派に育ってますよ?アフォしぃと蔑まれ、疎まれた貴方達と
同じ運命を貴方らは自分の子供に歩んでほしくなかったはずだ。でも貴方らの頭ではそ
の事は思いつかなかった。否、思いつけなかった。なぜなら、貴方を気づかせてくれる
人間がいなかったから。私は貴方らが代々続いていた汚れた連鎖を切り取る事に成功し
た。淀んだ運命から助けてあげたんです。どうか、優しくあの子らを見守ってあげてく
ください。」
「モモラーせんせーい! 何やってるの?早く来なよ!」
もうすっかり艶っぽい声になったギンの声に振り返り、
「はいはい、今いきますよ。」
小屋に歩みを進めていった。
春の始まりを告げる、心地の良い風が吹き、墓石に備えてあった花がゆれた。
その花の草が擦れ合う音が、モモラーにはチビ達の母親が笑っている声、あの甲高い感に
触る声ではなく、普通の聡明なしぃの優しい笑い声。
モモラーは歩きながら、その音に耳を傾け、小屋へと走った。
(終わり)
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