−和歌山県桃山町、都会のAAのしがらみから身を引いて田舎でのんびりと暮らすAAが居た。−
私の名は「桃山 白鳳」AA名を「モモラー」と言う。あまりAAの世界では知名度も低く、
実際さして名を売ろうとは考えていなかった。
「都会との暮らしを絶って五年か・・。田舎の暮らしもそう悪くないもんですね。しぃ美さん。」
一人のしぃに向かってそう言った。彼女の名は「しぃ美」。私と同じく都会で生まれたしぃである。
家族も都会育ちだが・・。その母親が世間で言う「アフォしぃ」だったのである。
育児に疲れたのか存在が疎いのか彼女はほぼ毎日の割合で母親から虐待を受けていた。
彼女はそんな母親から逃げるようにして此処、和歌山に来たのである。言わば彼女も都会に押し潰された
身と言って良い。
正直言って彼女が初めて弟の「チビギコ」と妹の「ベビしぃ」を連れてきたときには驚いた。
彼女の体は傷と痣だらけ。子供達・・。なんと幼い赤ん坊同然のベビしぃまでもが体に痣をつけて
いたのである。
彼女は私をみてこう言った。
「オネガイシマス。ナンデモイウコトキキマスカラ、ココニオイテクレマセンカ?」
都会を蔑視する気は無いのだが、都会住まいの連中はこういう弱者を平気で見捨てていた。
恐らく、都会では何度も断られたのであろう。
私は彼女を置いてやることにした。彼女らの話を聞いて行くうちに、あまりにも
不憫に思えてきたからだ。
そして彼女を私の元に置いて半年が経ち今に至る。
今日も早く起き、農作業に出かける。案の定、しぃ美さんはまだ寝てる兄弟達を置いて私より
先に畑仕事に出ていた。
「いつも早起きですね、しぃ美さんは。仕事を手伝ってくれてありがとうございます。」
「イエ、ムリヲイッテオイテイタダイテルミデスカラ・・。オレイナンテイリマセン。」
「いえいえ、対したおもてなしもお礼も出来ませんで・・さ、しぃ美さん、後は私に任して、
無理をしないで休んでいてください。元々これは僕の仕事ですから。」
「ス、スイマセン・・・。」
元々しぃ族は体が虚弱である。ましてや自分の背丈程も有る鍬をもって耕そうと言うのだから
しぃ美さんとてすぐに息があがってしまう。
私は生計を立てるために農作業をして果物を育てているのだが、その畑は周辺の倍ほども有る。
体力には元から自信はあったので、元々は一人でも食いつないでいた。
私は鍬を持ち、畑を耕しながらしぃ美さんにむかって話し掛けた。
「しぃ美さん、無理をすることはありません。私一人で貴方達を食べさせてやるくらいの事は
出来ます。ですから私に任して貴方は休んでてください。」
「アリガトウゴザイマス・・・デモセッカクオイテモラッテルノニナニモデキナイナンテ・・。」
しぃ族にも共通して言えることは(アフォしぃは別だが)義理固いと言うことだ。
しぃ美さんも私に対して相当恩義を感じているのだろう。
何かをやらないと、と必死になっているのかもしれない。
「良いですから。・・ん?そろそろ弟さん達の起きる頃じゃないですか?}
「エ?ハ、ハイ!チョットヘヤヲミテキマス。」
「はい。」
「・・・さて、私はもう少し頑張りますかね・・。」
そして畑仕事の残りを片付けようとして外に出た瞬間・・・。
「お・・・。おお?」
「タイヘンデス!チビチャンタチガイナ・・・ア・・アアア・・」
ちび達は珍しくこの日は早起きして外に出て遊んでいた・・・。普通の人なら微笑ましい風景
の内に入るであろう。が、遊びのやり方が不味かった。
耕したスイカ畑の真中で、驚くほどの短時間で土山を作ってキャッキャと遊んでいた。
「・・・(ポカーン)」
呆然と眺めている私の横で、しぃ美さんが叫んだ。
「コ・・・コラ!チビチャン!ベビチャンッ!モモヤマサンノハタケニナンテコトヲスルノ!ハヤクモモヤマサンニアヤマリナサイ!」
「ま・・・まぁまぁ、良いですよ。もう一回耕せば良いんだし。それに子供のやった
事ですし・・・。」
「ソ、ソウデスカ・・・ドウモスミマセン。デモワタシハトキニハチャントオコルトキニハオコラナイトダメダトオモイマス・・。」
「はぁ・・。」
「トキニハココロヲオニニシテチャントオコラナイト・・。チビチャンタチガズニノッテシマイマスヨ。」
しぃ美さんの言うこと最もだ。元来私は、本気で怒ったことが無い。
生まれつき温厚なのである。それが長所で有り短所でも有るのだが。
「ア!スミマセン。デシャバッタヨウナカタチニナッチャッテ・・。」
「えぇ・・。まぁ畑を耕しなおさないと。『しぃ美さん、手伝ってくれます?』」
「・・・エ?ハ、ハイ!ヨロコンデ!」
しぃ美さんは笑顔で応答した。そして二人で畑を耕し直し、ちび達を連れて昼食を取る事にした。
しぃ族は甘い味付けが好きだとしぃに関する著書「しぃの生態 毒雄 奈々氏著」を読んでいた
私であったが・・。
しぃ美さんは父親方のしつけが良かったのであろうか?好き嫌いは無かった。
ちび達は別であったが・・。砂糖が切れた・・。
昼食を済ませ、ちび達には桃ジュースを、しぃ美さんにはピーチティーを振舞っていると、
突然外から甲高く、それでいて妙に甘ったるい声が聞こえてきた・・・。
刹那、しぃ美さんの身が強張る。
そう、私も都会で何度も聞いたあの・・。「アフォしぃ」の声である。
それもかなりの数だ。10・・。いや20はいる。
なぜ?なぜアフォしぃが突如として和歌山くんだりまで現れたのであろうか?
少しも考えることなく、答えはすぐにわかった。
「虐殺厨・・・のせいで、居場所が無くなったのか?」
そう、アフォ、普通、聡明関係無くしぃを、およびその他被虐種を虐殺する人種の事だ・・。
そのせいで居場所が無くなり、大挙して押し寄せてきたのであろうか・・。
それにしてもなぜ和歌山に?その自分自身に対しての問いも、すぐに分かった。
最近和歌山では果物の産地として有名所にするため、都会に向けてCMやら広告やらで
宣伝をしている。それがアフォしぃの耳にも入ったのであろう。
「しぃ美さん・・。今は外に出ないほうが良いですね。アフォしぃにどんな因縁をつけられるか
わかったもんじゃない。」
「エェ・・・・・。ワカッテマス。」
しぃ美さんも私も、アフォしぃという存在がどんなに始末に置けないか分かっている。
特にしぃ美さんは、奴らに見つけられるわけにはいかない。
もし見つかれば、口調の違いから異種族への攻撃性が芽生え、攻撃を受けてしまうかもしれない。
そういう恐れがあったからだ。
恐らく、しぃ美さんも同じ考えだろう。
そして、しぃ美さんが半ば隠れるようにして窓から覗き込んだ瞬間、
「アァァァァァァァァアアァァァ!!!!!!」
と、とても大きな声で叫んだ。
「ど、どうしたんですか?」
しぃ美さんは、およそ20匹はいるであろうアフォしぃの集団の先頭に立ち、ひときわ
威張っているしぃに視線を合わせて、こう呟いた。
「オカア・・・サ・・ン・・・。」
運命の因果の歯車が少しずつ、回りだした。