しぃ美の母親はモモラーの言葉が言い終わるか言い終わらないかの内に、呆然とした顔のまま
涙を流していた。そしてゆっくりと顔を上げると、モモラーに向かって、悲願の表情を投げかけた。
「ワタシヲコロシテ・・・」とでも言うように。

「どうやら、覚悟は出来たみたいですね。」

しぃ美の母親はいまだ止まらない涙を抑えようとも拭き取ろうともせず、そのまま頷いた。
モモラーはゆっくりとしぃ美の母親に近づくと、首に手を廻し、もう一方の手で頭を抑えた。
このままモモラーの腕力で締め上げれば、安々と首の骨は折れるだろう。
その時、しぃ美の母親が呟いた。

「サイゴニ・・・・オネガイガアルノ・・・・・。」

「なんですか? 言い残したいことでも?」

「ウウン、 サイゴニイッカイダケ・・ダッコシテクダサイ」

「・・・・わかりました。」

モモラーはしぃ美の母親を優しく、抱きかかえた。

「・・・・・・カイ・・・」

「え?なんですか?」

「アナタノテ・・・・・トテモアッタカイ。」

「・・・・貴方と違って、無理やりでは無い、お互い同意の上でダッコですからね。貴方が今まで
 してきたダッコとは違うでしょう?」

「エエ・・・ワタシ・・・サイゴニシンジツノ ダッコヲタイケンデキテ・・・ヨカッタ・・」

「では、さようなら。」

モモラーは、しぃ美の母親の首に手を掛ける。

「シィミ・・・・・ゴメンネ・・・イマイクワ・・・モモラートカイッタワネ・・・・・






                      『ありがとう。』」



                ゴキッ


乾いたようで湿ったような音があたりに響いた。しぃ美の母親は、特に表情を変えるでも無く、
そのまま実に安らかな顔で息絶えた。

「貴方は・・・全角で喋れたのか。」

モモラーは一筋の涙を拭うと、しぃ美と、しぃ美の母親の死体を担ぎ、下の階へと向かった。

「ヴニャーン ヴニャーン!!」
「チィチィ! ミィミィ!」
「マァマァ! ナッコナッコ!」

ベビしぃの声が聞こえる。しぃ対の面々は約束を守ったようだ。モモラーは死体と残ったベビしぃを
アフォしぃによって作られた箱車に乗せ、帰路へとついた。

(一年後・・・・)

モモラーはいつもの朝に目を覚ます。
いや、目を覚まされると言ったほうが正しいか。

あの時に拾ったベビしぃはチビしぃに育ち、ちゃんとした躾の仕方で、特に知能にも問題は
無く、のびのびと育っていた。

そう、あのしぃ美の妹も・・。

「モモラーさん! おきておきて! はたけににんじんさんがなってるよ!」

「え!?もうなったんですか? そんな馬鹿な!」

モモラーが慌てて外に出てみると、畑には紙で細工した人参が其処彼処に散ばっていた。
モモラーは軽く苦笑いをした。悪戯癖はベビの頃から治っていないのか、と。
しかもそれ×6だ・・・。

「チビちゃん、貴方は一緒にみんなと遊んできなさい。人参さんは私がとっておきますから。」

「はーい!」

小さい手で挙手をすると、家の裏にある広場へと掛けていった。
モモラーはそこに有った紙でできた人参と、花を摘むと、家の東にある丘の上へと登っていった。
其処には、四角く形取られた墓が二つ有った。

「・・・しぃ美さん、貴方の妹が私を喜ばせようとこんな物を作ってくれたんですよ。」

と言い、一つの墓に、紙で出来た人参を添えた。

「・・・生まれてからずっと距離が遠かった親子の二人・・・。せめて墓くらいは一緒に作ってあげないとね。」

そう言うと、しぃ美の墓にはコスモスを。そして、しぃ美の母親の方の墓には、生前、しぃ美が

「コノハナハ、ハハガスキダッタノ・・・・。」

と言い、世話していた百合の花を添えた。

「貴方方のベビちゃん達も、立派に育っていますよ・・・。」

処分されてしまったベビの母親に向かって、静かに手を合わせる。
モモラーの戦いはひとまずは終わった。しかし、アフォしぃはいまだ生まれつづけ、人々を苦しめている。
しかし、今回のように、アフォしぃが改心し、しぃへと変わっていくこともあるのだ。
そうなるように、モモラーはチビをまともなしぃに育て、また孤児となったベビやアフォしぃのベビを
連れてきてしぃへとなるように育てる。その循環を続ければ、いつかはきっとしぃに対する被虐というイメージが
とれ、それこそしぃのいっているマターリとした世の中が来るかもしれないのだ。

モモラーは丘を降り、家へと戻った。
モモラー戦いは、まだ終わらない。

いつか、このAAという世界に平安が訪れるまで・・・・・。


「終わり」



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